太公望(宮城谷昌光)

太公望 上 (文春文庫)

太公望 上 (文春文庫)

中国は殷周革命期の軍師、太公望を描いた作品。


「覆水盆に返らず」とか「釣りをしていた太公望と出会う周の文王」とかいったエピソードを
あっさり一蹴しながら、
普通の人間には文字さえ伝わらなかった頃の伝奇的色彩に満ちた雰囲気を損なう事無く、
「都合の良い展開」を「伝奇小説の様式美」に描き代え、
有史に伝わる太公望の生涯とリンクさせながら殷周最後の大決戦である牧野の戦いへ導いていく
展開の構築美は見事。


登場人物の数がやたらと多く、その多くが一字名であることから良く人物が分からなくなるきらいがあり、
宮城谷作品の入門作としては特にお勧めしない。ファンなら読んで外れはないだろう。
あと当たり前だが、聞仲とか申公豹とかは出てきません。