AVANTASIA 2010/12/8
- アーティスト: トビアス・サメッツ・アヴァンタジア
- 出版社/メーカー: マーキー・インコーポレイティドビクター
- 発売日: 2010/03/31
- メディア: CD
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EDGUYのボーカル、トビアス・サメットを中心としたメタル・オペラプロジェクトの来日公演。
「ノルウェーの歌鬼」ヨルン・ランデ(Masterplan)、「イギリスの歌聖」ボブ・カトレイ(MAGNUM)*1といった豪華ゲストの中でも、
取り分けかつて同じHelloweenに所属していた「ジャーマン・メタル・ゴッド」カイ・ハンセン(GAMMA RAY)と、
「メロディック・スピードメタルの生ける伝説」マイケル・キスクが揃っての来日とあって非常に話題だった。
当日券の番号は1500番を超えており、端の方はそこそこ余裕があったものの平日とは思えない人の入り。
ライブ自体も実に素晴らしい出来だった。
感想
前回はヨルン無双という感じだったが、今回は「あの超絶なヨルンすらメンバーの一人」というスケール感のあるステージになった。
AVANTASIAのバラードは出来の良い曲が多いのだが、とりわけ「In Quest For」「The Story Ain't Over」といった
「まずボブ・カトレイの温かみのある声ありき」の名曲をステージで再現できたのは大きかった。
ボブはCDでの印象よりはラフな歌いぶりだったものの、他に出せない彼の味を出しきっていて素晴らしかった。
キスクは風邪だったらしくあまり声が出ていなかったが、ビブラートのかけっぷりが「うわぁぁぁキスクやぁぁぁぁ」と
リアクションをとりたくなるほどにマイケル・キスクであり、「もはや手の届かない輝かしい過去」として
「マイケル・キスク」を受け止めていた後追いの僕ですら感動を禁じ得なかった。
リアルタイムの人であれば、感動という言葉では言い表せない何かがあったろう。
そしてキスクをメタル界隈に引きずり込んだ張本人であり、メロディック・パワーメタルのオリジネイターであるカイ。
独特のくせのある声はメタル・オペラのような声に特徴が必要とされる楽曲では欠かせないものであり、
飄々とした立ち居振る舞いも合わせて存在感は抜群。
今回はやや存在感の薄かったヨルンだが、それでも歌声の深みと迫力は他を圧倒しており、
シャウト一発で場を持っていってしまうシーンもあった。
出てきた時から酔っ払ってんじゃねーかって顔だったのは違う意味で印象的だったが。
あとギタリストとしての顔が主だったが、オリヴァー・ハートマン(ex.AT VANCE)も参戦している。
相方のサシャ・ピート(ex.Heaven's Gate)と引き比べても見劣りしないプレーを見せながら、
コーラスにソロパートにと自慢の美声を響かせる姿は流石の一言。
本職はヴォーカルという印象が強いが、ギタリストとして見たら多分世界一歌の上手いギタリストだろう。
ホスト役のトビアスも絶好調で張りのあるハイトーンを聞かせており、これだけのゲストを従えながら
多くのメインパートを務めてお客さんを満足させていた。
ソングライティングや、中心人物としての役割を考えれば文句なく今晩の主役といってよかったろう。
ハイライト
ハイライトはアンコールに入ってから。
「Shelter From The Rain」ではついにキスクと、トレードマークであるフライングVを持ったカイが共にステージに。
なかなか絡まないなあと思ってたら、目の前で堂々といちゃついてました。
どうみてもアッーです。本当にありがとうございます。
冗談はともあれ、「カイとキスク」はジャーマンメタルの伝説と言うべき存在だった。
彼らがHelloweenに同時に在籍していた期間はさほど長くないが、「Keeper Of The Seven Keys Pt1.&Pt2.」はバンドの代表作となり、
本国のトビアスをはじめ、世界各国にフォロワーの種をまき散らし、日本でも絶大な支持を得るに至った。
だがカイが体調不良でバンドを脱退すると、元々メタル志向の強くないキスクはやがてシーンを離れてしまった。
カイはGAMMA RAYを結成してすっかり「ジャーマンメタルの顔」に成り上がったが、
二人がライブで絡む機会はなく、たまにキスクがゲスト参加してもそのまま加入には至らず、
21世紀の今日を迎えている。
その二人が同じステージで、明朗なメロディと疾走感にあふれたジャーマン・メタルチューンをプレーする。
それを書いたのは彼らに憧れてメタル界に飛び込んできたトビアス・サメットである。
このステージはトビアスの夢であると同時に、すべてのキーパー・フリークの夢その物だった。
そのステージが終わった後、オリバーがこっそり彼らの代表曲「Future World」のイントロを弾くと会場は大盛上がり。
「いや今日はトビアスのステージだから・・・」と遠慮していたが*2、二人の存在はそれだけ特別なものだった。
終わりに
それぞれの楽曲の質は高く、ゲストも豪華で、一夜限りのお祭りとしての抜群の爽快感があった。
これだけのステージが一夜限りというのは実にもったいない話で、出来ればまた来日してほしいなあというのが実のところ。
なかなか難しい面はあるが、夢は見続ける限りいつかかなうだろう。
それが望んだような形ではないにしても、きっといつかは叶うんじゃないかな。
そんな風に思える一夜でした。