あの頃、椎名林檎と

♪シドと白昼夢(椎名林檎)

その頃、−ちょうどモーニング娘。バズワードとしてキラキラしていたころ、
椎名林檎の歌に出てくる言葉はいちいち意味不明の言葉だった。
ベンジー*1もそうだし、「グレッチ」もそうだった。
[rakuten:waxmusic:10004719:image:small]←グレッチギター
シド・ヴィシャス」はぎりぎり人名だと分かったが誰かは分からなかった。
でも、喜んで聴いていた。
洋楽カバーの「唄ひ手冥利」もほとんど知らない曲だったが、やっぱり喜んで聴いていた。


その頃僕はモーニング娘。ファンが本来の意味でのモーヲタへ移行していく最中にいたが、
周りにも椎名林檎が好きという人が割といた。
モーニング娘。」が好き、ということはそんなに特別なことじゃなく、
椎名林檎」が好き、というのとあまり変わらないことだった。
ついでに、椎名林檎自身もモーニング娘。が好きだった。


それから先、何となく疎遠な存在になっていった。
元々彼女はトンガっていたけれども、ますますトンガって手がつけられないような印象のまま、
やがて全く聴かなくなった。
モーニング娘。はむしろどこか丸くなっていき、モーヲタだけがトンガったまま走り続け、
今も誰かだけをトンガらせながら、僕らを置いて走り続けている。


僕はいつしかメタルヘッドになり、
あの頃あんなに聞いていた多くのJ-POPたちはヒトカラに行った時、骨休めで歌う程度になっていった。
たまにヲタ友達とカラオケに行くと、戯れに「歌舞伎町の女王」を歌ったりもした。
なお、どんなにキーを上げ下げしても未だに椎名林檎は上手く歌えない。


更に時は経ち、気がつけばモーニング娘。とも、松浦亜弥とも、メロン記念日とも離れた今、
ふと思い立って椎名林檎を聞いてみた。
昔「君ノ瞳ニ恋シテル」を気持ちよく熱唱した思い出*2と、
あのトンガリに触れる時の痛々しさが交雑する中の出来事だった。


そう、シドはセックス・ピストルズの二代目のベーシストだ。
Anarky In The UKが代表曲。だから「ここでキスして」の彼もまたアナーキーなんだろう。
・・・ていうか、そこはギターソロじゃなくてベースソロなんだ?


そんな風に知識は増え耳は肥えたが、相変わらず歌詞は聞き取れない。
いや、むしろ聞き取らないようにしている。
やがて音がトンガるにつれて、インダストリアル・ライクなざらついたギターの音に、彼女の歌声は埋没していく。
気がつけばそれでも全然気にしなくなっている自分がいる。


やがてシャッフル機能がトンガって行く前の曲を流して、
ピカピカと光るメロディラインに、あの頃を思い出した。
自分も一緒にトンガって行けると思っていた頃。


もうあの頃は10年前なんだね。
結局みんな、それぞれに生きていくのだ。
それでも、振り返れる時間があり、時々に誰かを感じる事が出来れば、僕らは幸福なのだと思う。


そんなことを考えながら、喜んで聴いていた。
時々「丸の内サディスティック」のサビが頭をフル回転する冬の出来事。

私と放電(通常盤)

私と放電(通常盤)

*1:これは浅井健一のあだ名だと今日知った

*2:基本的に原曲が好きなのもある