僕らがいちばんBUZZだったころ

♪友よ(長渕剛)

バズ・ワードという言葉がある。
一見専門的に見えて、実際には具体性を伴わない言葉・・・
時に「何か凄そう」という感じだけを伴う、魔法のような。


2000年から2002年前半にかけて、モーニング娘。とは「BUZZ」そのものだった。
今も昔も、「一人も顔が分からない」と言われるのは一緒だけれども、
その頃は「一人も分からないこと」さえ一つのステイタスだった。


ちょうどその頃、Yahoo!BBADSL業界に参入し、
「ブロードバンド」という言葉はバズどころか、気にも留めないほど自然な物へと移り代わりつつあった。
まだまだインターネットはギークたちの遊び場で、
ほとんど自分しか知らなかった楽しみを共有出来るのが、嬉しくもあり不思議でもあった。


まだまだヲタクと呼ぶには若々しかった僕たちは、
それぞれに違う場所から歩いてきて、モーニング娘。に出会った。
僕は元々シャ乱Qのファンで、どこかに行き場を求めていたところだったし、
小田和正とか、山下達郎とか、鈴木雅之とか、長渕剛とか、チャゲ&飛鳥とか、サザンオールスターズとか、
当時既に年代物になっていたJ-POPばかり聞きあさっていた身には
どこか世間との接点を求めていたところがあったと思う。


東京に出て知り合った仲間達にも、いろんな人がいた。
昔とあるアイドルの親衛隊員だったとかいう人もいれば、
ASAYAN全盛期*1からのファンの人もいた。
井上陽水が好きとか、さだまさしが好きとか、畑違いと思われるところから歩いてきた人もいたし、
JUDY AND MARYが好きで解散ライブに行ったとか、椎名林檎について熱く語るような、
「アイドル近隣の世界」の人々もいた。
何気にT.M.REVOLUTIONがFavoriteだという人も多かったが、
シャ乱Qがそうだという人はそれほど多く見かけなかった。


歩いて来た場所が違い、好きなメンバーが違っていても、それだけで面白く感じていた。
「推しメン*2が加入同期だから」
「同じユニットの仲間だから」「推しメン同士仲が良いから」
「自分達の年が近いから」「家が近いから」「同じ趣味があるから」「はがき職人仲間だから」・・・
僕らはただそれだけで簡単にくっついては離れ、次第に仲良くなったり離れたりを繰り返していた。
時には夜更けまで語り合ったこともあって、
そんな時の話題は「もし推しメンが卒業したらどうするか?」なんて話だったりもして、
でもその時の僕には、一瞬凍ってしまうほどの冷ややかさで迫ったものだった。


今、彼らは何を聞いているだろうか。
王道でAKB48とか平野綾とかだろうか。
いきものがかりやSuperflyあたりかもしれない。
椎名林檎や、T.M.Revolutionはまだまだ活動しているし、*3
自分自身もはや、あの頃からは知る由もないくらい音楽の世界は広がっている。


それでも時に思う。
今、彼らはどうしているだろうか。


まだBUZZだった頃の面影を求めて歩いているかもしれない。
今ではそれもすっかり過去の思い出の一部にして、普通の生活を送っているかもしれない。
ひょっとしたらもう、この世にはいないかもしれない。
勿論まだ、モーニング娘。と共に歩いている人々もいるだろう。
僕のようにヲタクとしてはもう戦力外だと分かっていながら、
一般人にもなりきれずにいる人も、どこかにいるかもしれない。


彼女たちがさまざまな道を歩いているのと同じように、
僕らの道もあの頃から散り散りに分かれ分かれて、果てしなく続いている。


けれど僕らはあの頃、何かが生まれ年老いていく直前の、きらめく時間を共にした。
それはみんな、一つだろう。


どこから来たのかがばらばらでも。
どこへ行くのかが違っていても。
その時間をどう、思っているとしても。


もう二度と出会えないとしても、黄昏の度に共にいた日々を思い出すだろう。
そしていつもその事に、感謝できる自分自身でありたい。
ありがとう。

*1:モーニング娘。が取り上げられ始めたのは1997〜、2002年当時には既にヲタ暦5年の人がいたわけだ

*2:いわゆる「好きなメンバー

*3:ちなみにこの二人は別途自分のバンドを持っていたりもする