甲賀忍法帖(山田風太郎)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)

徳川将軍家の跡取りをめぐり、死闘を繰り広げる伊賀・甲賀各10名の忍者たち。
しかしその頭領となるべき二人は、互いに恋焦がれる身だった。


当たれば必殺、破れれば必死の忍術を尽くした戦いのタイトさもさることながら、
心を殺したはずの(心を殺したが故に?)忍者たちを突き動かす愛憎、悲喜こもごもの情念の数々が素晴らしい。
ことメインテーマでもある男女の情念に関しては、時に純朴に時にべっとりと描き出す見事さ。


読んでためになるというような高尚な雰囲気があるわけではないが、
食い入るようにマンガや児童小説を読みふけった過去を思わせる、むせ返るような「大衆小説」の香りに満ちている。
それが何とも魅力的。